問9 2017年9月実技生保顧客資産相談業務
問9 問題文
MさんのAさんに対するアドバイスに関する次の記述(1)〜(4)について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
(1)「当該生命保険を解約する以外の方法として、現時点で払済終身保険に変更することを検討してください。将来において、Aさんが勇退する際に、契約者をAさん、死亡保険金受取人をAさんの配偶者等に名義変更することで、払済終身保険契約を役員退職金の一部として現物支給することができます」
(2)「現在加入している生命保険を現時点で払済終身保険に変更した場合、変更した事業年度において多額の雑損失が計上されます。したがって、変更した事業年度の経常利益が大きく減少することになります」
(3)「現在加入している逓増定期保険は、Aさんが勇退を検討している10年後の退職金準備として適しているため、解約等することなく、このまま継続されたほうがよいと思います」
(4)「Aさんが、がん等の重度の疾病に罹患し、長期にわたり不在となった場合、社長不在による信用不安が発生することも考えられます。そのため、所定の状態になった場合に生前給付金を会社が受け取ることのできる特定疾病保障保険等に加入することも検討事項の1つとなります」
問9 解答・解説
払済保険、逓増定期保険の経理処理・商品性、特定疾病保障保険に関する問題です。
(1)は、○。払済保険は、生命保険の保険料の払込みを中止し、その時点での解約返戻金をもとに、“保険期間は変えない”で、“保険金額は少ない”保険に変更したものですが、長期平準定期保険や逓増定期保険を払済終身保険に変更することも可能であり、保険料負担を軽減可能です。
また、法人が役員や従業員にかけた生命保険は、受取人を役員・従業員本人やその遺族に名義変更し、退職金の一部として現物支給可能です。
この場合、支給時点での解約返戻金相当額が退職収入とみなされ、他の退職手当等と合算して、退職所得額が計算されます。
(2)は、×。逓増定期保険を払済終身保険へ変更する場合、解約返戻金相当額は保険料積立金として資産計上し、変更時点での資産計上額については前払保険料として資産計上します。また、変更時点の資産計上額と解約返戻金相当額との差額については、雑収入(または雑損失)として計上します。
問題文では現在までの払込済保険料6,300万円ですから、前払保険料としての資産計上額は半額の3,150万円。
よって資産計上額3,150万円<解約金5,300万円ですので、差額2,150万円は雑収入として益金算入します。
(3)は、×。逓増定期保険の単純返戻率(解約返戻金÷払込保険料累計額)は、逓増率変更年度から上昇し、保険金額のピーク前後とともにピークを迎えます(契約から5〜10年後)が、その後保険期間満了時まで年々逓減しながら推移します(保険金額は同程度の水準を維持)。
本問の場合、現時点で既に契約から8年経過しており、Aさんが勇退を予定している今から10年後には解約返戻金が大幅に減額している可能性が高いため、退職金準備として継続することは不適切です。
(4)は、○。特定(三大)疾病保障保険は、三大成人病のガン・急性心筋梗塞・脳卒中にかかった場合に、死亡保険金と同額の特定疾病保険金が支払われる保険ですので、役員を被保険者とし、法人を保険金受取人とすることで、役員の長期入院等による信用不安が発生した場合の法人の資金需要への備えとして適切です。
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