問7 2024年1月実技個人資産相談業務
問7 問題文
Aさんの2023年分の所得税の課税に関する次の記述(1)〜(3)について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
(1)「Aさんは、退職金の受給時に『退職所得の受給に関する申告書』を提出しているため、退職金の額の20.42%相当額が源泉徴収されていますが、他の所得とあわせて確定申告をすることで所得税の還付を受けられる可能性があります」
(2)「Aさんが、特定口座(源泉徴収あり)内で生じた上場株式の譲渡損失の金額について、翌年分以後の上場株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除するためには、当該損失の金額について確定申告をする必要があります」
(3)「Aさんの給与収入の金額は850万円を超えているため、総所得金額の計算上、給与所得の金額から所定の算式により算出した所得金額調整控除額を控除します」
問7 解答・解説
退職所得・上場株式の損失繰越・所得金額調整控除に関する問題です。
(1)は、×。退職する従業員から「退職所得の受給に関する申告書」の提出がない場合、退職金の20.42%が所得税・復興特別所得税として源泉徴収されます。
退職所得控除額は控除されないため、退職者が確定申告して税額の精算を行うことになります。
(2)は、○。上場株式の譲渡損失は、同一年の株式の譲渡所得や申告分離課税を選択した配当所得と損益通算できますが、それでも損失が上回る場合は、確定申告することで翌年以降3年間その損失額を繰り越せます。
(3)は、×。所得金額調整控除は、基礎控除の10万円引き上げに伴う給与所得控除や公的年金等控除の10万円引き下げにより、扶養親族がいる人や給与と年金の両方を得ている人の負担増を生じさせないようにする控除です。
子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除は、給与収入(1,000万円超の場合は1,000万円)から850万円を控除した額の10%が、給与所得から控除されるもので、23歳未満の扶養親族や特別障害者を扶養する人が対象です。
→子ども・特別障害者の所得金額調整控除=(給与収入−850万円)×10%
また、給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除は、給与所得控除後の給与と公的年金等に係る雑所得(いずれも上限10万円)の合計額から、10万円を控除した残額が、給与所得から控除されます。
→給与と年金の所得金額調整控除=(給与所得控除後の給与+年金)−10万円
Aさんの給与収入は850万円超のため子ども・特別障害者等を有する場合の所得金額調整控除額が算出できますが、対象となる被扶養者がいません。また、65歳未満で受け取る公的年金は年60万円までは公的年金等控除により所得ゼロとなるため、公的年金の雑所得は算出されません(本問の場合、公的年金の雑所得以外の合計所得金額が1,000万円超2,000万円以下のため公的年金等控除は最低50万円)。このため、こちらの控除額も算出されないことから対象外です。
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