問54 2021年1月学科

問54 問題文と解答・解説

問54 問題文択一問題

遺産分割協議書に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。

1.被相続人が作成した遺言がなく、共同相続された預貯金は、相続開始と同時に当然に法定相続分に応じて分割されるため、相続人が相続預金を引き出す際は、遺産分割協議書を作成する必要はない。

2.遺産分割協議書の形式は、法律によって特に定められていないため、公正証書以外の書面によっても作成することができる。

3.遺産の分割について、共同相続人間で協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、原則として、各共同相続人はその分割を家庭裁判所に請求することができる。

4.遺産を現物分割する内容の遺産分割協議書を作成する場合、対象となる遺産の一部について遺産分割協議が成立していないときであっても、それを除いた遺産についてのみ定めた遺産分割協議書を作成することができる。

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問54 解答・解説

遺産分割に関する問題です。

1.は、不適切。被相続人の預貯金は、遺産分割の対象であり、相続人がその預貯金を引き出すには、自己の法定相続分までであっても遺産分割協議書が必要となります。
以前は、判例として「預貯金は遺産分割の対象外であり、法定相続分で分割されるもの」とされており、相続人が銀行を訴えれば、法定相続分の引き出しに応じる金融機関もありましたが、2016年に最高裁が判例を変更し、「遺産分割の仕組みは相続人間の実質的公平を図るためのもの」であり、「できる限り幅広い財産を対象とすることが望ましい」としたことから、金融機関側も対応を変更することになりました。
以前の判例が「預貯金を遺産分割の対象外」としてきたのは、現金と違って「預貯金は金融機関に引き出しを請求できる金銭債権であり、割り切れる(可分)債権は、遺産分割手続は不要で、法定相続分に応じて相続する」としてきたためです。しかし、多額の生前贈与を受けていた相続人がいた場合、預貯金を法定相続分で分割すると、著しい不公平が発生してしまうことがあります。このため最高裁は、相続人間の不公平の調整のため、預貯金を遺産分割の対象とするよう判例変更しました。
しかし、こうなると相続開始後に発生する葬儀費用等の支払いに支障が出る場合があるため、2018年7月1日より、相続する「各口座ごとの預貯金額の3分の1×法定相続分」までは、他の共同相続人の同意無しで遺産分割前に引き出し可能(金融機関ごとに上限150万円)となりました(遺産分割前の払戻し制度)。
また、家庭裁判所が仮払いの必要性があると判断した場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、法定相続分を超過する額でも同意無しで遺産分割前に引き出し可能です。

2.は、適切。遺産分割協議書は、遺産の分割方法について相続人間で協議・合意した内容を記載した書面ですが、公正証書により作成することや書面自体を作成することが法律上義務付けられているわけではありません。ただし、公正証書により作成された遺産分割協議書は、法律上の高い証拠力と執行力が認められるため、代償分割における代償財産の確実な交付に有効です。

3.は、適切。遺産の分割について、共同相続人の間で協議がまとまらない場合、各共同相続人はそれぞれ家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることができます。
調停分割は、各共同相続人の申立てに基づき家庭裁判所の調停により分割する方法です。

4.は、適切。遺産分割協議書を作成する場合、相続人全員が合意していれば、遺産の一部だけを先に分割する一部分割も可能です。

よって正解は、1.

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