問59 2013年5月学科
問59 問題文択一問題
株式会社X社の社長であるAさん(X社の全株式を保有)は、後継者で常務取締役である長男Bさんが経営権を確実に確保し円滑に事業承継がなされるための対策についてファイナンシャル・プランナーにアドバイスを求めている。Aさんへのアドバイスに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、長男Bさん以外にもAさんの推定相続人となる親族がいるものとする。
1.「X社株式の評価額を引き下げれば、X社株式を移転する際の取得者の資金負担が軽減しますが、引下げによってX社の経営に支障が出ることがないように配慮することが大切です」
2.「Aさん保有のX社株式を長男Bさんが取得する場合の長男Bさんの資金負担が心配ならば、あらかじめ、役員報酬を増やす等により長男Bさんの金融資産を増やしておく方策が考えられます」
3.「X社株式を長男Bさんが相続により取得する場合の相続税負担が心配ならば、あらかじめ過半数を占めるX社株式を、社外の取引先等に分散して譲渡しておくべきです」
4.「Aさんの相続が開始したときに、相続人間で円滑に遺産分割がなされるかどうかが心配ならば、あらかじめ遺言で、各相続人の相続分や遺産の分割方法を指定しておくことが有効です」
問59 解答・解説
非上場会社の事業承継対策に関する問題です。
1.は、適切。自社株の評価額が高額だった場合には、評価額を引き下げるために、役員退職金の支給や記念配当・特別配当への切り替えといった対策を行うことで、結果的に相続税の負担軽減を図ることができますが、会社の資産・利益の減少を伴うため、会社経営に支障が出ない範囲で行うことが重要です。
2.は、適切。役員給与を増額すると、将来相続人となる後継者の現金が増えるため、贈与税・相続税の支払い能力(担税力)を上げることができます。
3.は、不適切。親族の贈与税・相続税の納税負担を軽減したいからといって、自社株式の過半数を外部に分散させてしまうと、後継者が経営権を維持できず、事業継続が難しくなることも有り得ます。
納税負担を軽減しながら後継者に経営権を維持させるには、非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例や遺留分に関する民法の特例を活用することが必要です。
4.は、適切。円滑・確実な事業承継のためには、相続開始の際に円滑に遺産分割が進むように、遺言で各相続人の相続分や遺産の分割方法を指定することが必要です。
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