問9 2018年5月実技生保顧客資産相談業務
問9 問題文
MさんのAさんに対するアドバイスに関する次の記述(1)〜(4)について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
(1)「解約を検討中の生命保険について、解約をせず、払済終身保険に変更することも検討事項の1つとなります。現時点で払済終身保険に変更した場合であっても、65歳時の解約返戻金額は契約時に確定している4,800万円が確保されます」
(2)「解約を検討中の生命保険について、払済終身保険に変更した場合、払済終身保険に変更した時点における解約返戻金相当額とその保険契約の加入時からの払込保険料累計額との差額をその変更した日の属する事業年度の益金の額または損金の額に算入します」
(3) 「経営者が要介護状態あるいは重度の疾患等で長期間不在となった場合、X社の業況が悪化する可能性が想定されます。既契約の加入状況を点検・整理したうえで、Aさんが重い病気等になった場合にX社が一時金(現金)を受け取ることができる生前給付タイプの生命保険に新規加入することも検討事項の1つとなります」
(4)「Aさんが死亡した場合の事業保障資金の確保のみを目的とするのであれば、保険期間が短い定期保険に見直す方法があります。保険期間が短い定期保険は割安な保険料で高額保障を準備できることが特徴ですが、長期平準定期保険のようなキャッシュバリューは期待できません」
問9 解答・解説
法人の生命保険の経理処理・リスク管理に関する問題です。
(1)は、×。払済保険は、生命保険の保険料の払込みを中止し、その時点での解約返戻金をもとに、“保険期間は変えない”で、“保険金額は少ない”保険に変更したものですが、長期平準定期保険を払済終身保険に変更することも可能であり、保険料負担を軽減可能です。
ただし、払済保険に変更した時点で保険料の払込みは中止するため、解約返戻金は運用によって予定利率に基づき増えてはいくものの、当初契約時に確定していた金額は確保されません。
(もし当初契約時の金額が確保されるなら、さっさと払済保険に変更した方が、ノーリスクで保険料負担も無しで保障を確保できてしまいますよね。)
(2)は、×。長期平準定期保険を払済終身保険へ変更する場合、解約返戻金相当額は保険料積立金として資産計上し、変更時点での資産計上額については前払保険料として資産計上します。また、変更時点の資産計上額と解約返戻金相当額との差額については、雑収入(または雑損失)として計上します。
長期平準定期保険では、前半6割期間での保険料支払い時は、保険料の2分の1を定期保険料として損金算入し、2分の1を前払保険料として資産計上ですので、益金または損金に算入するのは、「加入時からの払込保険料累計額」ではなく、「変更時点の資産計上額=払込保険料累計額の2分の1」と解約返戻金相当額との差額です。
(3) は、○。例えば、特定(三大)疾病保障保険は、三大成人病のガン・急性心筋梗塞・脳卒中にかかった場合に、死亡保険金と同額の特定疾病保険金が支払われる保険ですので、役員を被保険者とし、法人を保険金受取人とするような生前給付タイプの生命保険は、役員の長期入院等による信用不安や業績悪化が発生した場合の法人の資金需要への備えとして適切です。
(4)は、○。比較的割安な保険期間の短い定期保険に新規加入することで、高額保障を得ながら今後の保険料負担を軽減することができます。ただし、いわゆる掛け捨ての保険ですので、解約返戻金は少なく、被保険者が保険期間中に死亡した場合には死亡保険金が支払われますが、保険期間終了まで生存した場合には支払いはありませんので、長期平準定期保険のようなキャッシュバリュー(解約返戻金等の現在価値)は期待できません。
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