問10 2020年9月実技中小事業主資産相談業務
問10 問題文
建築基準法の規定に関する次の記述(1)〜(4)について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
(1)甲土地と乙土地を一体とした土地上に、近隣商業地域に属する部分と第一種住居地域に属する部分にまたがって建築物を建築する場合、その全部について、近隣商業地域の建築物の用途に関する規定が適用される。
(2)甲土地と乙土地を一体とした土地上に耐火建築物を建築する場合、建蔽率の上限となる建築面積は、429uである。
(3)甲土地と乙土地を一体とした土地上に共同住宅を建築する場合、共用の廊下および階段の用に供する部分の床面積は、当該共同住宅の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の3分の1を限度として、建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入されない。
(4)甲土地と乙土地を一体とした土地上に建築する建築物が、天空率により計算した採光、通風等が道路斜線制限により高さを制限された場合と同程度以上であるときは、道路斜線制限は適用されない。
問10 解答・解説
建築基準法上の規制に関する問題です。
(1)は、○。土地の一体利用に関して、建築物の敷地が異なる用途地域にわたる場合、その敷地全体に対して、過半の属する用途地域の用途制限が適用されます。
よって、設例の土地の場合、全体の2/3を占める近隣商業地域部分の用途制限が土地全体に適用されることになります。
(2)は、×。防火地域・準防火地域に耐火建築物を建築する場合、10%の建ぺい率緩和を受けることができます。
(以前は緩和対象は防火地域のみでしたが、法改正により2019年6月より、準防火地域に耐火建築物を建築する場合でも10%の建ぺい率緩和の対象となりました。)
また、指定建ぺい率が80%の地域でかつ防火地域内に耐火建築物を建てる場合は、建ぺい率の制限がありません(建ぺい率100%)ので、近隣商業地域部分で適用される建ぺい率は100%となり、第一種住居地域部分で適用される建ぺい率は、指定60%+緩和分10%=70%となります。
ここで、建築物の敷地が、建ぺい率の異なる2つ以上の地域にわたる場合、敷地全体の最大建築面積は、「各地域の面積×各建ぺい率」の合計となります。
また、この土地の3m市道は「建築基準法第42条第2項に該当する」とありますが、これは都市計画区域にある幅4m未満の道で、建築基準法上の道路とみなしているもの(2項道路)です。
2項道路の中心線から2m後退した線が、道路との境界線とみなされるため、みなし道路境界線と道までの部分(セットバック部分)は、容積率や建ぺい率の計算の際、敷地面積に算入されません。
セットバックで後退する距離は、現在の道路幅に対して、4mに足りない分の幅員の2分の1です。
本問の場合、幅員3mですから、セットバックした場合の後退距離は、
(4m−3m)÷2=0.5m
よって、
近隣商業地域部分の面積=(300u+100u)−(後退距離0.5m×間口20m)=390u
第一種住居地域部分の面積=200u−(後退距離0.5m×間口10m)=195u
近隣商業地域部分建築面積上限=390u×10%=390u
第一種住居地域部分建築面積上限=195u×(60%+10%)=136.5u
よって、対象地の建築面積上限=390u+136.5u=526.5u
(3)は、×。建築物の共用廊下・階段、エレベーターの昇降路部分やエレベーターホールの床面積については、規模の上限なく、容積率を算定する際の延べ面積から除外可能です。
以前はエレベーターは除外の対象外でしたが、平成26年の法改正により除外可能となり、容積率制限の関係上既存の建物にエレベーターを設置できなかったものが設置できるようになり、新築の建物もより階数の高い建物を建てられるようになりました。
(4)は、○。道路斜線制限とは、前面道路の反対側の境界線からの水平距離に対する高さの比率の上限で、用途地域によって制限が決まっていますが、規制と同程度以上の採光・通風等が確保できる一定の基準に適合する場合、道路斜線制限は適用されないという緩和措置があります(天空率による斜線(高さ)制限の緩和)。
※ 「天空」とは、地上から空を見上げたとき、建物等によって遮られない空の広がりで、「天空率」は、道路の反対側(隣地)から空を見上げたときの、その建物による天空の程度を示した値です。
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