問59 2017年1月学科
問59 問題文択一問題
非上場企業の事業承継における一般的な課題や対応策に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1.事業承継を円滑に進めるためには、適切な後継者を決定し、将来の経営者としての十分な育成を図ることが望ましい。
2.オーナー経営者が保有している自社株式を役員である後継者に取得させる場合、後継者にとってその取得資金の負担が大きいときには、あらかじめ後継者の役員報酬を増加させるなどの対策を講じることが考えられる。
3.自社株の評価額を引き下げるためには、積極的な費用計上を行って利益を圧縮することや、新規取引先に対する金銭債権のうち回収可能性があるものについても債権放棄により貸倒損失を計上することなどが望ましい。
4.オーナー経営者が土地などの多額の個人資産を自らが経営する法人の事業の用に供している場合、オーナー経営者が死亡し、その子が後継者となり事業関連資産を相続するとき、後継者以外の推定相続人の遺留分の侵害の問題が生じるおそれがある。
問59 解答・解説
非上場会社の事業承継対策に関する問題です。
1.は、適切。円滑・確実な事業承継のためには、後継者を早期に決定し、十分な育成を図るべきです。後継者として適当な候補者がいない場合、相続問題と事業承継問題が同時に発生し、株式の外部流出のリスク等により円滑な事業承継が阻害される恐れがあります。
2.は、適切。役員給与を増額すると、将来相続人となる後継者の現金が増えるため、贈与税・相続税の支払い能力(担税力)を上げ、代償分割や自社株式の買い取り時の資金負担を軽減することができます。
3.は、不適切。自社株の評価額が高額だった場合には、評価額を引き下げるために、役員退職金の支給等の積極的な費用計上による利益の圧縮や、記念配当・特別配当への切り替えといった対策を行うことで、結果的に相続税の負担軽減を図ることができますが、資産状況・支払能力等からみて、回収可能性があるものについては債権放棄による貸倒損失の計上は認められません。
4.は、適切。オーナー経営者の場合、土地等の個人資産を自社に貸し出している場合がありますが、後継者以外の推定相続人がいる場合には、後継者に事業承継のために事業に関係する資産を集中的に承継させると、相続人が最低限受け取れる財産である遺留分を侵害してしまうリスクがありますので、代償分割や遺留分に関する民法の特例により事前に相続人間で合意を図っておく必要があります。
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